Asian CORE Program by Japan Society for the Promotion of Science. Frontiers of material, photo- and theoretical molecular sciences. (独)日本学術振興会アジア研究教育拠点事業 物質・光・理論分子科学のフロンティア

 

年次報告

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【平成18年度報告概要】

[共同研究]
 これまで積み重ねてきた研究拠点機関間の研究者の交流を再構築し,物質・光・理論分子科学の各分野において活発な共同研究,研究交流を開始した。
(1) 物質分子科学
 分子科学研究所の江東林助教授と中国科学院化学研究所のDeqing Zhang教授は、浙江大学(中国)のZhiquan Shen教授と共に「π電子系有機分子を基盤とする機能性ナノ構造体の構築と機能開拓」に関する共同研究を開始した。本共同研究は従来の炭素ナノ素材では実現できない光機能性に着目し、光機能性π電子系有機分子を設計し、様々な光機能性ナノ構造体を合成することを目的としている。江東林助教授グループの物質合成と化学研究所のDeqing Zhang教授グループの自己組織化、また、浙江大学Zhiquan Shen教授グループの物質変換科学との異分野のシームレスな融合により新しい物質科学の創出および世界をリードするアジア若手の育成を目指している。平成18年度では、上述の戦略目標を達成するため、様々な新しい機能性π電子系有機分子やπ電子系有機配位子の設計および合成を行い、自己組織化のための分子プログラミングプロトコルを確立するとともに、ナノ構造体の分子設計の基礎を築いた。得られたナノ構造体の情報を分子設計にフィードバックし、分子構造の最適化を進めている。
 分子科学研究所の宇理須恒雄教授と中国科学院化学研究所のLi-Jun Wan教授は、河南大学(中国)のYu-Jun Mo教授、上海交通大学(中国)のChangsun Wang教授と共に、細胞等の生体材料の水中での原子間力顕微鏡による高分解イメージングについての共同研究を開始した。平成18年度は、生体細胞膜のAFMその場観察、脂質二重膜のAFM および光学的評価、Si基板の微細加工および、バイオセンサー応用についての研究を進めた。
 分子科学研究所の加藤晃一教授と韓国科学技術院(KAIST)自然科学部のByong-Seok Choi教授は、光州科学技術院(Kwangju Institute of Science & Technology、韓国)のJae Il Kim助教授と共に「超高磁場NMRを用いた蛋白質-ペプチド相互作用の精密解析」に関する共同研究を開始した。分子科学研究所に設置された920MHz超高磁場NMR装置はペプチドと蛋白質の相互作用を高精度で解析するための強力なツールとなることが期待される。本共同研究は、ペプチド合成と分子生物学的手法を駆使することによって、安定同位体標識を施したペプチドおよび糖ペプチドを効率的に生産し、超高磁場NMRをはじめとする分光学的計測手法を徹底活用して標的蛋白質との結合様式の詳細を原子レベルの分解能で解明することを目的としている。さらには、本共同研究を基盤として、超高磁場NMR装置の活用を軸とした、日韓の分子科学の学術交流ひいてはアジアの研究教育の振興に資することを目標としている。

(2) 光分子科学
 分子科学研究所の岡本裕巳教授と中国科学院化学研究所のMinghua Liu教授は、「特異なナノ分子システムのナノ光学」に関する共同研究を開始した。本研究では,独自の高度な技術を持つ物質開発グループ(Liu教授グループ)と光計測グループ(岡本教授グループ)が国際的に協力することで,ナノ構造物質の新たな光学的・物理化学的性質を見いだし解明し,新たな機能を開発することを目標としている。18年度はそのための準備段階として,互いの研究グループのポテンシャルをよく理解し,最も効率的で学術的に有意義な共同研究がどのような形であるかを,研究者の相互訪問によって議論し,同時に互いの信頼関係の確立を進めた。
 分子科学研究所の大島康裕教授と台湾科学院原子分子科学研究所(IAMS)のYen-Chu Hsu上級研究員は、同じくIAMSのChi-Kung Ni研究員、国立清華大学(台湾)のI-Chia Chen教授、国立中央大学(台湾)のBor-Chen Chang教授と共に「コヒーレントレーザー分光による反応ダイナミックスの解明」に関する共同研究を開始した。本研究計画は、通常のパルスレーザーに比較して格段に高いコヒーレンスを有するレーザーを開発して高分解能コヒーレント分光に活用することにより、光励起した分子が引き起こす多様な化学反応や緩和過程の詳細を解明し、さらに、そのような励起分子のダイナミックスが周辺環境との相互作用によってどのように影響されるかを明らかにすることを目的としている。18年度の具体的実績としては、日本より研究者4名が台湾IAMSを訪問し、また、台湾より研究者3名が分子研を訪問し、ナノ秒コヒーレントパルス光源の性能評価ならびに利用法について意見交換を行なった。

(3) 理論分子科学
 分子科学研究所の岡崎進教授と台湾科学院原子分子科学研究所(IAMS)のDah-Yen Yang 上級研究員は、分子研の森田明宏助教授、IAMSのS.H.Lin上級研究員、国立陽明大学(台湾)のSheh-Yi Sheu教授と共に「生体分子中における量子過程の計算機シミュレーション」についての具体的な課題設定等、検討を開始した。本研究では、タンパク質や生体膜など生体分子の機能発現に本質的な役割を果たしているプロトン移動や電子移動、さらにこれらの過程に密接に関連している振動励起や緩和などの量子過程に対する計算科学的研究手法の確立を目的とし、主として量子統計力学や量子古典混合系近似等を用いたシミュレーション手法の開発を行う。18年度は、台湾側参加者が得意とするタンパク質のダイナミックスに関わる手法と、日本側参加者が得意とする原子核の量子動力学に関わる手法とを比較検討し、両者の方法論を共有・融合することからはじめて、具体的な研究内容についての検討を開始した。

[セミナー]
 分子科学研究所の魚住泰広教授と中国科学院化学研究所のMei-Xiang Wang教授は、平成18年10月に化学研究所において、「中国−日本 グリーン化学合成ワークショップ」を開催した。次世代の化学反応には環境調和性が強く要請されており,その関連領域研究は「グリーンケミストリー」と総称され,その社会的注目度ならびに基礎〜応用研究の進捗は近年加速度的に成長しつつある。本会議では,日中両国の関連領域研究者により各研究グループの最新の成果を発表し,情報交換,討論の場を持つことで,本研究領域研究の相互理解を深め,近将来の実質的な共同研究や人的交流の足場を得ることを目的とした。日本からは分子科学研究所,京都大学,大阪大学の関連領域研究グループの参加を得,また中国(化学研究所)からは Laboratory of Molecular Recognition and Selective Synthesis の組織的参加を得た。
 分子科学研究所の江東林助教授と中国科学院化学研究所のMinghua Liu教授は、平成18年12月5〜9日に化学研究所において、「第1回物質・光・理論フロンティアー冬の学校」を開催した。本スクールでは、分子科学の次代を担うアジアの若手研究者の育成に貢献することを目的とした。主要4カ国それぞれから物質・光・理論分子科学の各分野の講師を派遣し、各国の主要3分野の現状と最先端についてのレクチャーを行った。この他に各国から所長レベルの研究者を1名ずつ派遣し、各4拠点研究機関の歴史や研究活動全般についての包括的なレクチャーを行うことによって、若手研究者の共同研究への活発な参加を促すきっかけとした。
 この他、平成19年3月に分子科学研究所において、「第1回アジア研究教育拠点事業物質・光・理論分子科学フロンティア 第1回年次会議」を開催し,共同研究・研究交流の推進と次年度へ向けての計画の進展について議論した。その際に,各共同研究における具体的な進行状況と各セミナーの開催状況をチェックするとともに、その後の研究計画の再検討や、新たなセミナー計画についての議論を行った。また、分子科学研究所のラボツアーや進行中の共同研究以外の研究も含めたポスターセッションを設けて、新たな共同研究の可能性を検討する材料とした。この他、本事業の研究交流経費を用いて、アジア出身で欧米で活躍するトップクラスの研究者を2名招き、ゲスト講演を行なった。これによって、本事業で形成されるアジアネットワークと北米や西欧のコミュニティを有機的につなぐためのきっかけとした。

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